
ひとりでも安心できる老後の備え。
老人ホーム入居と「死後事務代行」のお話
もう、ひとりで抱え込まないでください

「もし、私に何かが起きたとき、誰が駆けつけてくれるのだろう」
「老人ホームに入りたいけれど、身寄りのない私には保証人がいないから無理なのかしら」
今、このブログを読んでくださっているあなたは、ふとした瞬間にそんな不安を感じて、胸が締め付けられるような思いをされているのではないでしょうか。
はじめまして。一般社団法人セカンドライフ支援協会で入居支援を担当しております。
普段は協会の相談窓口で、皆様と同じようなお悩みを持つ方とお話ししたり、趣味のガーデニングで育てたお花をホームにお持ちしたりして過ごしています。
多くのご高齢の方が、「誰にも迷惑をかけたくない」という優しいお気持ちゆえに、ひとりで悩みを深めてしまっています。でも、どうかご安心ください。あなたのように身寄りがなくても、安心して老人ホームに入居し、穏やかな最期を迎えるための仕組みがございます。
それが、今回お話しする**「死後事務代行(しごじむだいこう)」**という契約です。
【この記事の結論】
身寄りがなくても、**「死後事務代行」**の契約を結ぶことで、老人ホームへの入居が可能になり、亡くなった後の葬儀や手続き、お部屋の片付けなどをすべてプロに任せることができます。これは、あなた自身の安心と尊厳を守るための、とても温かい「お守り」のような制度なのです。
これから、この制度についてゆっくりと、分かりやすくご説明していきますね。一緒にお茶でも飲むような気持ちで、リラックスして読み進めてみてください。
そもそも「死後事務代行」とは? 遺言書との違い
「死後事務代行」という言葉、少し難しく聞こえるかもしれませんね。「死後の事務」を「代行」する、つまり**「亡くなった後に必要なこまごまとした手続きや作業を、家族に代わって行ってくれるサービス」**のことです。
よく「遺言書があれば大丈夫でしょう?」と質問されることがあります。実は、これには大きな違いがあるのです。
遺言書は「財産」のこと、死後事務は「手続き」のこと
簡単に言うと、遺言書は「私が持っているお金や不動産を誰に渡すか」を決めるものです。
一方で、死後事務代行は、以下のような「誰かが動かないといけない実務」を引き受ける契約です。
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ご遺体の引き取り
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葬儀の手配や埋葬(納骨)
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行政への届出(死亡届の提出など)
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老人ホームの退去手続き・未払い費用の精算
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お部屋の片付け(遺品整理)
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電気・ガス・水道・携帯電話などの解約
これらは、遺言書だけではカバーしきれない部分なのです。ご家族がいらっしゃれば、これらをすべてご家族が行いますが、おひとりさまの場合は、これらを行ってくれる人をあらかじめ決めておく必要があります。それが死後事務代行なのです。
なぜ、老人ホーム入居に「死後事務代行」が必要なの?
あなたが今、一番気になっているのは「老人ホームに入居できるかどうか」ということではないでしょうか。
老人ホーム側が、身寄りのない方の入居をためらう最大の理由は、実は「お金」のことよりも、**「亡くなった後に誰が対応してくれるのか」**という点にあるのです。
施設側の切実な事情
少し現実的なお話になってしまいますが、施設側としては、入居者様が亡くなられた後、勝手にお部屋の荷物を処分することが法律上できません。
もし、引き取り手がいなければ、お部屋はずっとそのままになってしまい、新しい方が入居することもできなくなってしまいます。また、葬儀を誰があげるのか、ご遺骨をどこに納めるのかが決まっていないと、施設スタッフもどう対応してよいか途方に暮れてしまいます。
そこで、施設側は入居条件として「身元保証人」を求めます。しかし、頼れるご親族がいない場合、その代わりとして**「死後事務代行」**の契約を結んでいることを条件に入居を許可するケースが非常に増えているのです。
つまり、死後事務代行契約を結ぶことは、老人ホーム入居への「パスポート」を手に入れることと同じ意味を持つのです。
具体的に何をしてくれるの? 私たちが寄り添う4つの安心
では、実際に死後事務代行を依頼すると、どのようなサポートが受けられるのでしょうか。私たちが実際に行っている支援の例を挙げながら、具体的にイメージしてみましょう。
1. 病院や施設への駆けつけと、ご遺体の搬送
「最期のとき、誰も来てくれなかったら寂しい」
そんな不安をお持ちではないでしょうか。契約を結んでいれば、病院や施設から連絡が入り次第、私たちが家族の代わりに駆けつけます。そして、葬儀社と連携して、ご遺体を安置場所まで丁寧にお運びいたします。
2. ご希望に沿った葬儀と納骨
「立派な式でなくていいけれど、誰かに見送ってほしい」「先祖代々のお墓に入れてほしい」あるいは「散骨して自然に還りたい」。
ご希望は人それぞれです。死後事務代行の契約では、お元気なうちに「どのような最期を迎えたいか」をしっかり話し合います。あなたの想いを形にするために、私たちが責任を持って手配いたします。
3. お部屋の片付けと遺品整理
愛用していた家具、大切にしていた衣類、思い出のアルバム…。あなたが大切にしてきたものたちも、そのまま放置されることはありません。
「この着物は友人に譲りたい」「日記は誰にも見せずに処分してほしい」といった細かなご要望にも対応いたします。お部屋をきれいに片付け、施設への返却手続きまで行います。
4. 面倒な行政手続きや解約作業
役所への死亡届の提出、年金受給の停止手続き、健康保険証の返却など、死後は驚くほど多くの手続きが必要です。また、携帯電話やクレジットカードの解約も必要です。これら煩雑な手続きを、すべて代行いたします。
利用者の声:Aさん(74歳)の事例
ここで、以前私が担当させていただいたAさんのお話をご紹介させてください。
Aさんも、あなたと同じように「身寄りがなく、これからどうやって生きていけばいいのか」と、私の手をとって涙を流されていました。
ご相談時の状況:
賃貸アパートで一人暮らし。足腰が弱り、買い物も不自由に。「孤独死して誰にも発見されなかったらどうしよう」という恐怖で、夜も眠れない日々でした。
Aさんは、私たちと何度も面談を重ね、死後事務代行を含む身元保証契約を結ばれました。
「私が死んだら、好きだったカサブランカの花を棺に入れて、海が見える霊園で眠らせてほしい」
そんな具体的なご希望をお聞きし、契約書に盛り込みました。
その後、Aさんは希望通りの老人ホームに入居されました。
入居後のAさんの笑顔は、今でも忘れられません。
「これでもう、いつお迎えが来ても大丈夫。誰にも迷惑をかけず、自分の望み通りに旅立てる準備ができたから、あとは毎日を楽しく生きるだけよ」
そうおっしゃって、施設のお仲間とカラオケを楽しんでいらっしゃいました。
死後事務代行は、「死ぬための準備」ではありません。「これからの人生を、心から安心して楽しむための準備」なのです。
契約までの流れと、失敗しないためのポイント
「制度のことは分かったけれど、どうやって進めればいいの?」と思われたかもしれません。一般的な流れと、信頼できるパートナーの選び方をお伝えします。
手続きのステップ
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相談・問い合わせ:まずは司法書士、行政書士、または私たちのような支援団体に相談します。
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ヒアリング:ご自身の財産状況、健康状態、死後の希望などを詳しく伝えます。
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プランの提案・見積もり:希望する内容に合わせて、費用が算出されます。
信頼できる依頼先の選び方
死後事務代行は、あなたが亡くなった後に履行される契約です。「死人に口なし」で、杜撰な対応をされてしまっては大変です。だからこそ、依頼先選びは慎重に行う必要があります。
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話をじっくり聞いてくれるか:事務的な対応ではなく、あなたの不安や想いに耳を傾けてくれる担当者かどうか。
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費用の透明性:「一式〇〇万円」といったどんぶり勘定ではなく、何にいくらかかるのか明確な見積もりを出してくれるか。
費用について:安心を買うための相場
一番気になるのは費用のことかと思います。
死後事務代行の費用は、依頼する内容によって大きく変わりますが、一般的な目安をお伝えします。
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基本手数料(手続き代行など):30万円〜80万円程度
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葬儀・納骨の実費:数十万円〜(ご希望のプランによる)
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家財処分・清掃費用:10万円〜30万円程度
決して安い金額ではありません。しかし、これは「誰にも迷惑をかけないための費用」であり、「あなた自身の最期の尊厳を守るための費用」です。
ご自身の預貯金で賄える範囲なのか、どのようなプランなら無理がないか、一緒にシミュレーションしながら考えていきましょう。

おわりに:あなたはもう、ひとりではありません
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
死後事務代行という言葉や仕組みについて、少しでもイメージが湧きましたでしょうか。
文字ばかりで少し疲れてしまったかもしれませんね。お庭の草木が季節ごとに表情を変えるように、人の心も、不安になったり、希望を持ったりと揺れ動くものです。今、不安でいっぱいになっているとしても、それはあなたが「これからの人生を大切にしたい」と真剣に考えている証拠です。
どうか、「身寄りがないから」といって、ご自身の幸せを諦めないでください。
死後事務代行という仕組みを使えば、家族がいなくても、老人ホームに入り、温かい食事と安心できるベッドで眠る生活を手に入れることができます。そして、最期のときまで、あなたらしく生き抜くことができるのです。
私たち支援員は、契約書を作るだけの関係ではありません。
あなたが安心して暮らせるよう、家族のように寄り添い、時には世間話をしながら、一緒に歩んでいくパートナーです。
もし、まだ少しでも不安が残るようでしたら、お近くの地域包括支援センターや、私たちのような支援団体に「ちょっと話を聞いて」と声をかけてみてください。
決して一人で抱え込まず、その荷物を少し私たちに預けてみませんか?
あなたのこれからの毎日が、春の日差しのように穏やかで、笑顔あふれるものになりますように。心から願っております。
